通し狂言小春穏沖津白波ー小狐礼三

「昔の日本を垣間見たかのようです!」と興奮冷めやらぬ様子の学生。
優雅な大名家に、華やかでにぎやかな吉原。江戸っ子の人情に夏の狐火。日本の古典文化歌舞伎の世界観は、国や文化を超えて学生たちの心に響いたようです。

2016 年1 月某日、国連大学の学生や研究者を毎年恒例の「歌舞伎鑑賞会」へ招待しました。この日、新春歌舞伎公演千秋楽であったため、お正月のお飾りで彩られた国立劇場には着物姿の来場者も多く、日本独特のお正月の雰囲気につつまれ学生も顔をほころばせていました。

実はあまりなじみがなかった?
実際に歌舞伎を観るまでは「格式ばったもので、少し退屈そう。」とややマイナスなイメージを持つ学生が多く、「禅」「仏教」「日本の歴史についての劇」「退屈そう」さらには「ヨーロッパ風の劇かとおもっていた」という声まで。日ごと勉学に勤しむ学生には、思いのほか歌舞伎はあまりなじみがなかった様子です。

意外にもKABUKIは面白かった!
今年の新春歌舞伎は、「小春穏沖津白波小狐礼三」という河竹黙阿弥の代表作でした。桜の舞う神社での大名家のやり取り、雪が積もるうらさびしい小屋で針を回す女。狐でも化けて出そうな薄暗い山道と、日本昔ながらの風景に、学生の一人は「タイムスリップしたようだ」と、とても感動した様子。月夜に照らされた野山が、銃声で一瞬で桜吹雪の舞う春になる「雪月花のだんまり」では大歓声が上がっていました。

稲荷社にずらりと並んだ鳥居の中や上で繰り広げられた大詰めの立ち回りには、皆、身を乗り出して見入っていました。舞台を広く使った大仕掛けの演出と、およそ歌舞伎の常識を覆すようなアクロバティックな演出に、「既存の考えにとらわれず、流行を取り入れ、人々を楽しませる」という伝統芸能の粋な心意気に圧倒された一日でした。